親の高齢化や施設への入居、相続などをきっかけに、実家を片付けて処分する「実家じまい」を検討する方が増えています。しかし、家財の整理だけでなく、不動産の売却や解体、相続手続き、家族との話し合いなども必要になるため、何から始めればよいか分からない方も多いでしょう。
実家じまいは、単に家の中を空にする作業ではありません。残す物と処分する物を分け、重要書類や貴重品を確認したうえで、売却・賃貸・解体など実家の今後を決める必要があります。準備をせずに進めると、家族間で意見が食い違ったり、必要な書類を処分したりする可能性もあります。
この記事では実家じまいの意味や始めるタイミング、具体的な進め方、費用、注意点を整理して解説します。
Contentsこの記事でわかること
- 🏠 実家じまいの意味と行う目的
- 📅 実家じまいを考え始めるタイミング
- 📦 家財の片付けや重要書類の整理方法
- 🤝 家族で事前に話し合うべき内容
- 💰 財産や契約情報を整理する方法
- 💰 実家じまいにかかる費用と主なリスク
実家じまいとは

実家じまいとは、親が住んでいた家や、家族が長年所有してきた実家について、家財を整理し、売却・解体・賃貸などによって管理を終えることです。
単に家の中を片付けるだけではなく、家財の仕分け、不用品の処分、相続手続き、不動産の名義確認、売却や解体の手配まで含めて進める点に特徴があります。
たとえば、親が高齢者施設へ入居して実家に戻る予定がない場合や、親の死後に相続した家を誰も使用しない場合などに、実家じまいが必要になります。
実家をそのまま残す方法もありますが、誰も住まない状態が続くと、固定資産税や修繕費などの負担が発生します。建物の劣化が進み、庭木や雑草の管理、害虫対策、防犯対策が必要になることもあります。
そのため、今後使用する予定がない実家については、家族で話し合い、早めに方針を決めることが大切です。
実家じまいと遺品整理の違い
実家じまいと遺品整理は似ていますが、対象となる作業の範囲が異なります。
| 項目 | 実家じまい | 遺品整理 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 実家の管理や所有を終える | 故人が残した物を整理する |
| 行う時期 | 親の生前・死後のどちらもある | 原則として親族の死後 |
| 主な作業 | 家財整理、手続き、売却、解体など | 遺品の仕分け、形見分け、処分など |
| 不動産への対応 | 売却・賃貸・解体まで検討する | 必ずしも不動産処分まで行わない |
遺品整理は、故人が残した家財や持ち物を整理する作業です。一方、実家じまいでは、家財を片付けた後に、その家をどうするかまで決めます。
親が生きている間に本人と相談しながら進める場合は、生前整理の要素も含まれます。親の死後に始める場合は、遺品整理や相続手続きと並行して進めることになります。
実家じまいに含まれる主な作業
実家じまいでは、一般的に次のような作業を行います。
- 家族や親族との話し合い
- 家財や思い出の品の仕分け
- 貴重品や重要書類の捜索
- 不用品の処分や買取
- 電気・ガス・水道などの解約
- 相続や不動産名義の確認
- 売却・賃貸・解体方法の検討
- 管理会社や不動産会社への相談
実際に必要となる作業は、親が存命か、すでに相続が発生しているか、持ち家か賃貸かによって変わります。
たとえば、親が賃貸住宅に住んでいる場合は、不動産の売却や解体は必要ありませんが、退去期限までに家財を片付け、原状回復や公共料金の解約を進める必要があります。
一方、持ち家の場合は、片付けが終わった後も、売却・賃貸・解体・親族による利用など、今後の扱いを決めなければなりません。
ポイント
実家じまいは「家財を処分する作業」だけではなく、「実家を今後どのように扱うか決めて、必要な手続きまで完了させること」です。片付けだけを先に進めず、家族の意向や権利関係を確認しながら全体の方針を決める必要があります。
実家じまいを考えるきっかけ

実家じまいを考える主なきっかけは、親の高齢化や施設への入居、相続、空き家の管理負担などです。
実家が空き家になってから慌てて進めると、片付け・相続手続き・不動産の処分を同時に行うことになり、家族の負担が大きくなります。親が元気なうちから、実家を今後どうするか話し合っておくことが大切です。
親が高齢になった
親が高齢になると、掃除や庭の手入れ、家具の移動などが負担になります。長年住んだ実家には家財が多く、体力が低下してから一度に整理するのは簡単ではありません。
親が判断できるうちであれば、次の内容を本人に確認できます。
- 残しておきたい物
- 子どもや親族へ譲りたい物
- 処分してよい物
- 仏壇や写真の扱い
- 実家を今後どうしたいか
本人の希望を確認せずに家族だけで処分すると、後悔やトラブルにつながる可能性があります。
施設への入居や同居が決まった
親が高齢者施設へ入居したり、子どもとの同居を始めたりすると、実家が空き家になる場合があります。
ただし、入居直後にすべての家財を処分する必要があるとは限りません。自宅へ戻る可能性や親の希望を確認し、段階的に進めます。
| 状況 | 主な対応 |
|---|---|
| 自宅へ戻る可能性がある | 必要な家具や衣類を残す |
| 長期入居が見込まれる | 家財整理と実家の処分を検討する |
| 家族が実家を使う | 使用者と管理方法を決める |
| 誰も使う予定がない | 売却・賃貸・解体を比較する |
親が亡くなり実家を相続した
親が亡くなった場合は、遺品整理とあわせて実家じまいを進めます。
片付けを始める前に、遺言書や権利証、通帳、保険証券、印鑑などを確認しましょう。重要書類を誤って処分すると、相続手続きに影響する可能性があります。
また、相続人が複数いる場合は、実家を誰が相続するのか、売却するのかを話し合う必要があります。家財の処分や不動産の売却を、一人の判断だけで進めないことが大切です。
空き家の管理が負担になった
誰も住んでいない実家でも、次のような費用や管理作業が発生します。
- 固定資産税や火災保険料
- 建物の修繕
- 庭木や雑草の手入れ
- 定期的な換気や通水
- 防犯対策
- 郵便物の確認
管理を続けられないまま放置すると、雨漏りやカビ、害虫、庭木の越境などにつながることがあります。
特に、家族が遠方に住んでいて定期的に通えない場合は、売却や解体、空き家管理サービスの利用を検討する時期です。
ポイント
実家じまいは、空き家になってから始めるものではありません。親の生活環境が変わったときや、維持・管理の負担が増えたときに、家族で今後の方針を話し合いましょう。
進め方の流れ

実家じまいは、家財の片付けだけで完了するものではありません。家族で方針を決めたうえで、必要な手続きや不動産の処分を順番に進めます。
基本的な流れは、次のとおりです。
- 家族で今後の方針を話し合う
- 家財を仕分けて片付ける
- 必要に応じて相続登記を行う
- 売却・解体・賃貸などから実家の扱いを決める
家族での話し合い
最初に、実家を今後どうするか家族で話し合います。
片付けを先に始めると、家族が残したかった物を処分したり、売却に反対する親族が後から見つかったりする可能性があります。特に親が存命の場合は、本人の意向を確認してから進めることが大切です。
主に話し合う内容は、次のとおりです。
- 実家を残すか処分するか
- 誰が作業や手続きを担当するか
- いつまでに実家じまいを終えるか
- 費用を誰が負担するか
- 残したい家財や思い出の品はあるか
- 売却・解体・賃貸のどれを検討するか
話し合った内容は、家族全員が確認できるように記録しておきましょう。メールや共有メモなどに残すと、後から認識が食い違うのを防ぎやすくなります。
家財の片付け
方針が決まったら、実家に残された家財を整理します。
最初から必要な物と不用品だけに分けると、判断に迷って作業が止まりやすくなります。次のように分類すると進めやすくなります。
| 分類 | 主な内容 |
|---|---|
| 残す物 | 今後使用する家具や生活用品 |
| 譲る物 | 家族や親族が引き取る物 |
| 売る物 | 家電、家具、貴金属、骨董品など |
| 処分する物 | 再使用する予定がない不用品 |
| 保留する物 | すぐに判断できない物 |
片付けでは、通帳・印鑑・権利証・保険証券・契約書などの重要書類を先に探します。写真や手紙、仏壇、形見なども、家族に確認せず処分しないよう注意が必要です。
不用品が少なければ、自治体の一般ごみや粗大ごみを利用できます。一軒分の家財を短期間で整理する場合は、遺品整理業者や片付け業者への依頼も検討します。
相続登記
親が亡くなり、実家を相続した場合は、不動産の名義を確認します。
実家が故人名義のままでは、原則としてそのまま売却できません。遺言書や遺産分割協議の内容を確認し、実家を取得する相続人を決めたうえで相続登記を行います。
2024年4月1日から相続登記は義務化されており、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。正当な理由なく申請しなかった場合は、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。2024年4月1日より前に発生した相続も義務化の対象です。(法務局)
相続登記では、状況に応じて次のような書類を準備します。
- 戸籍謄本や除籍謄本
- 住民票や戸籍の附票
- 固定資産評価証明書
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 相続人の印鑑証明書
必要な書類は相続の状況によって異なります。相続人が多い場合や、過去の相続登記が行われていない場合は、司法書士への相談も検討しましょう。
売却・解体・賃貸の選択
家財や名義を整理したら、実家を今後どのように扱うか決めます。
主な選択肢は、売却・解体・賃貸です。それぞれメリットと注意点が異なるため、建物の状態や立地、維持費を踏まえて比較します。
| 選択肢 | 適しているケース | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 売却 | 今後住む人がおらず、管理を終えたい | 売却価格や仲介費用を確認する |
| 解体 | 建物の老朽化が進んでいる | 解体費用や解体後の税負担を確認する |
| 賃貸 | 立地がよく、入居需要が見込める | 修繕費や管理の負担が続く |
| 家族が利用 | 居住や別荘などの用途がある | 使用者と費用負担を決める |
売却を考えている場合は、先に解体や大規模な修繕を行わず、不動産会社へ査定を依頼します。建物を残したまま売却した方がよい場合もあるためです。
複数の不動産会社へ相談し、現状のまま売る場合と、解体して土地として売る場合を比較してから判断しましょう。
ポイント
実家じまいは、家族での話し合いから始め、家財整理・相続登記・不動産の処分へ進めます。片付けや解体を先行させず、実家の今後を決めてから必要な作業を行いましょう。
放置するリスク

実家じまいを先延ばしにして空き家のまま放置すると、建物の劣化や維持費の増加、近隣トラブルなどにつながる可能性があります。
誰も住んでいなくても、所有者には建物や敷地を管理する責任があります。将来使う予定が決まっていない場合も、そのままにせず、定期的な管理か売却・解体などの方針を検討しましょう。
建物の劣化が進む
人が住まなくなった家は、換気や掃除、設備の点検が行われにくくなります。その結果、湿気がこもり、カビや腐食が発生しやすくなります。
特に注意したいのは、次のような問題です。
- 雨漏りや外壁のひび割れ
- 床や柱の腐食
- カビや害虫の発生
- 給排水設備の劣化
- 庭木や雑草の繁茂
劣化が進んでから修繕すると、早い段階で対応した場合より費用が高くなることがあります。売却を希望しても、建物の状態によっては査定額が下がる可能性があります。
維持費がかかり続ける
誰も住んでいない実家でも、所有している限り費用は発生します。
主な維持費は、次のとおりです。
| 費用 | 主な内容 |
|---|---|
| 固定資産税 | 土地や建物の所有者にかかる税金 |
| 火災保険料 | 火災や自然災害に備える保険 |
| 修繕費 | 雨漏りや設備の故障への対応 |
| 管理費 | 清掃、換気、通水、庭の手入れ |
| 交通費 | 遠方から実家を確認しに行く費用 |
一つひとつの負担が小さく見えても、数年間続けば総額は大きくなります。使用予定がない場合は、維持を続ける費用と売却・解体にかかる費用を比較する必要があります。
防犯や火災のリスクが高まる
空き家は人の出入りが少ないため、不法侵入や盗難、放火などの対象になるおそれがあります。
郵便物がたまっていたり、庭が荒れていたりすると、長期間留守であることが外から分かりやすくなります。破損した窓や施錠されていない出入口を放置すると、侵入される危険も高まります。
また、電気設備の劣化や放置された家財が原因で火災が発生する可能性もあります。定期的に建物を確認し、不要な物を減らしておくことが大切です。
近隣トラブルにつながる
管理されていない実家は、周辺の住宅へ影響を与えることがあります。
たとえば、庭木の枝が隣の敷地へ伸びたり、雑草に害虫が集まったりするケースです。屋根材や外壁の一部が落下すれば、人や車を傷つけるおそれもあります。
近隣から苦情を受けてから対応すると、修繕や剪定を急いで手配しなければならない場合があります。家族が遠方に住んでいる場合は、空き家管理サービスなどを利用し、定期的に状況を確認する方法もあります。
売却や活用が難しくなる
建物の劣化や家財の放置が進むと、売却や賃貸に向けた準備に時間と費用がかかります。
室内に大量の家財が残っている場合は、査定や内覧の前に片付けが必要になることがあります。建物の状態が悪ければ、修繕や解体を求められる可能性もあります。
将来的に売却する可能性があるなら、劣化が進む前に不動産会社へ相談し、現状のまま売れるか確認しておくと判断しやすくなります。
ポイント
実家を放置すると、劣化・維持費・防犯・近隣トラブルのリスクが重なります。今後使う予定が決まっていない場合も、定期管理を続けるか、売却や解体を検討しましょう。
よくある質問
まとめ
実家じまいは、実家の家財を片付けるだけでなく、相続登記や売却・解体・賃貸などを含めて、実家の管理を終えるための取り組みです。親の高齢化や施設入居、相続、空き家の管理負担などをきっかけに検討します。
進める際は、家族で方針を話し合い、残す物や処分する物を整理したうえで、必要な手続きへ進みます。親が亡くなっている場合は、相続人や不動産の名義を確認し、一人の判断だけで売却や解体を進めないことが大切です。
実家を長期間放置すると、建物の劣化や維持費の増加、防犯上の問題、近隣トラブルにつながる可能性があります。今後使用する予定がない場合は、定期管理を続けるのか、売却・解体・賃貸のどれを選ぶのかを早めに検討しましょう。
遺品整理でお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

